牛は、4つの胃袋を持っています。 「第一の胃」では、食べた物の繊維質を分解しています。「第二の胃」「第三の胃」では、それを更に分解しています。そして「第四の胃」にて最終的に消化し、栄養分を取り込んでいます。そのような事情から、牛は常に口を動かし、咀嚼を反芻しているのです。牛が「反芻動物」と呼ばれる由縁です。
さて、私たちが課題解決について取り組んだとき、「解決策が見つからない」と、早々にあきらめていないでしょうか。これを牛の胃に例えれば、まだ「第一の胃」レベルであり、最初の分解が行われたに過ぎないのです。解決策を生み出すためには、機会あるごとに課題を反芻し、「新しい解決方法」を繰り返し考え抜くことが大切なのです。例えば、駅まで歩く間、ホームで電車を待つ間、電車に乗っている間など、その時間をどのように活用されているでしょうか。私たちの生活の中には、まだ十分に活用されていない「すきま時間」が存在します。このような時間を利用して「何か新しい解決策はないものか」と、反芻して考え抜くのです。「考え」は「第一の脳」から「第二の脳」「第三の脳」へと進み、ついに「第四の脳」に達します。ここでは、今まで時間をかけ、いろいろな視点から検討を反芻してきた成果が現れます。徐々に「解決策」のイメージが姿を現したり、何かをきっかけに突然に解決策を閃いたりするのです。「反芻思考」とでも、名づけましょうか。
1948年にスイス人のジョルジュ・デ・メストラル氏は、愛犬を連れて野山を歩いていたところ、自分の服や犬の毛にたくさんついた「野生ゴボウの実」から、「マジックテープ(クラレ登録商標)」を思いつきました。では、だれでも野山を歩けばマジックテープを思いつくでしょうか。彼は「テープや糊を使わずにくっつけることはできないか」「それが繰り返しできたら便利なのになあ」と、課題を反芻していたからこそ、解決策を生み出すことができたのではないでしょうか。
最後に、このたび発生した宮崎県の口蹄疫につきましては、関連する方々には心からお見舞い申し上げます。私も毎年、宮崎県市町村職員研修を担当させていただいております。研修後の懇親会に見せる、みなさんの明るい笑顔が思い浮かびます。なにとぞ一日も早く回復されますよう、心から祈念申し上げております。(文責:古木)