「社会人基礎力育成グランプリ2012決勝大会」に参加して(社会人基礎力)
2012年2月27日「社会人基礎力育成グランプリ2012決勝大会」が日経ホールにて開催されました。このイベントには毎年参加させていただき、社会人基礎力の意義を再確認させていただいております。しかし、今年は例年とは少し違う印象を受けました。主催が経済産業省から日本経済新聞社に変わったというだけではなく、プレゼン後の審査員による質問が鋭くプレゼンテーターが回答に窮する場面が見られたり、全チーム発表後の講評では、よかった点をほめるだけではなく改善点を指摘するなど、真剣さが増したように感じられました。
今回は各大学による発表に先立ち、「社会人基礎力に関する研究会」にて座長を務められた法政大学院の諏訪教授から「社会人基礎力人材育成協議会」についての報告がありました。平成18年に「中間とりまとめ」が発表されて以来、どのような動きになっているのか注目しておりましたので、たいへん興味深く聞かせていただきました。諏訪教授は来場者に対して、たいへんわかりやすい言葉で説明されていました。「指示待ち人間」では困るから「前に踏み出す力」が必要ですよね、「マニュアル人間」では困るから「考え抜く力」が必要ですよね、「一匹オオカミ」では困るから「チームで働く力」が必要なのですと。私も日頃社員・職員研修に登壇しながら感じていることを、わかりやすい言葉で的確に表現されたことに感銘を受けました。
この協議会報告の中から、印象に残ったことを3点ご紹介させていただきたいと思います。
まず最初は、「社会人基礎力」における「基礎」という言葉の意味についてです。これは「もう基礎力は十分」というようなものではなく、「エッセンシャル=不可欠」という意味の直訳とのことでした。私なりには、「基礎力」は決して初級的な力ではなく、本質的な力として「社会人基本力」と理解していますので、納得しながら聞かせていただきました。
次は、「グローバル人材」の育成についてです。そこで要求されるのは、①外国語によるコミュニケーション ②異文化理解力 ③社会人基礎力 の3つがバランスよく備わっていることだとしています。ここでいう「グローバル」とは、単に外国で働くことや、外国人と働くことだけを指しているのではなく、海外にも目を向け世界的な視点から考えることをも含むと思います。これからの社会人にとっては、標準的な人材ということになるでしょう。
最後は、「講義型」による社会人基礎力育成の可能性についてです。今回のグランプリをはじめとして、PBL(Project Based Learning:課題解決型学習)が中心となる傾向が見られました。それに対して、実際の講義をプロジェクトと見立て ①集中講義 ②グループティスカッション ③プレゼンテーション という構成で効果をあげている事例が紹介されました。PBLの場合、中身が濃いだけに対象人数に限りがありますし、対象者レベルが比較的高くなるように感じていました。できるだけ多くの方に社会人基礎力を拡げ育成していくため、ボリュームがある中間層に対して気軽に参加できる形態としては、たいへん有望な方法だと感じました。私どもの研修も最初は関連知識・情報の提供であり、続いてチーム演習、全体発表、今後の行動計画作成と続き、研修後に効果を定着化させるために自己啓発方法・推薦図書の紹介、メールによる相談対応を実施していますので、たいへん共感できました。
これから新入社員を迎える時期であり、私も例年通り、数社の新入社員研修に登壇します。採用企業側からすれば今後の活躍を期待する新人であり、新入社員側からすれば激戦の就職活動を経て手にした立場です。この両者の期待を確実に達成するように、「指示待ち人間」にならないように「前に踏み出す力」を、「マニュアル人間」にならないために「考え抜く力」を、そして「一匹オオカミ」にならないように「チームで働く力」を身につけていただく新入社員研修に取り組んでいこうと決意を新たにいたしました。(文責:古木)