「社会人基礎力」のバイブル的存在である「中間取りまとめ」では、前回取り上げた「はじめに」に続いて「Ⅰ.職場や地域社会で求められる能力」について書かれています。今回と次回は、この章についてみていきたいと思います。
さて、最近のビジネス環境の変化について、「早いなあ」「ついていくのに精一杯だ」と感じませんか? 私も講師として、昨年も北海道の網走から九州の長崎まで、いろいろな業界のいろいろな階層(管理職から新人・内定者まで)の研修に登壇する機会に恵まれました。そこで感じたことは、どこも大きな変化に直面していること、どこも大きな変化に対応することに苦労していることです。
ようやく苦労して必要な能力を身につけたと思っても、また次から次へと新たな必要な能力が現れます。そんな時こそ、一度身につければ「一生もの能力」、たとえ異動しても「どこへでも持ち運べる能力」を身につけたいと思いませんか?
この章では、そんな「コア」となる能力が示されています。
まずは、「①基礎学力」です。 これは、読み、書き、算数、基本ITスキルなど、学生時代に身につける能力です。最近は国語や歴史の教科書が売れているそうですが、社会人になってからこの「基礎学力」の必要性・面白さに目覚めた方が増えているようです。
次は、「②専門知識」です。 これは、担当業務に必要な知識や資格に関する能力です。担当業務や技術革新などにより、常に新しい知識・能力を習得していく必要があることが特徴です。
そして、「③社会人基礎力」です。 これは、コミュニケーション、実行力、積極性などであり、「基礎学力」と「専門知識」を結びつけ効果的に発揮させるために必須な能力となります。今回のメインテーマとなる能力です。
最後に、「④人間性、基本的な生活環境」です。 これは、思いやり、公共心、基礎的なマナー、身の周りのことを自分でしっかりとやるなど、すべての基本・前提となる能力です。「人間力」などとも言えると思いますが、これは決して「生まれ持ったものもの幼少期の育成環境によるもので変えられない」ということはありません。時間はかかりますが、「習慣」により変えることができる能力です。
1,000回以上の研修に登壇してみても、「中間取りまとめ」の中で示されている「求められる能力」は、まったく同感です。基本的に必要な能力はこれで十分なのです。 強いてつけ足すとすれば、「⑤実務経験」でしょうか。
【イメージ図】
《基礎学力》 ⇔ 《社会人基礎力》 ⇔ 《専門知識・実務経験》
↑ ↑
《人間性、基本的な生活環境》
能力開発・人材育成と言われますが、基本は、これらの能力を「体系的」に身につけていくことだと思います。
■自分はどこが強く、どこが弱いのか。
■強い所をどのような方法で、より強化していくのか。
■弱い所をどのような方法で、克服・強化していくのか。 などがポイントになります。
次回はグローバルな視点から、米国や英国での「必要となる能力」についてみていきたいと思います。 (文責:古木)