「情況把握力」としては、古川久敬著の「チームマネジメント」(日経文庫)を推薦したいと思います。この本はリーダー向けにチーム運営について書かれたものですが、メンバーにとってもたいへん参考になる内容が満載です。メンバーもいずれはリーダーの役割を果たすときが訪れるでしょうし、何よりもリーダーだけではなくメンバー全員がチームマネジメントについて考えて取り組んだならば、そのチームは素晴らしいパフォーマンスを発揮できることでしょう。
さて、私が登壇する研修では、いろいろなチーム演習に取り組んでいただくのですが、チームによって素晴らしいパフォーマンスを発揮することがあります。各メンバーが積極的に自分の意見を述べ、それに対して他のメンバーからも建設的な意見が出ます。制限時間いっぱいまで熱い意見交換が続きます。そこで、このようなチームは他のチームと何が違うのかとよく観察してみますと、メンバー相互の「情況把握力」の違いに気づかされます。「情況把握力」とは、「自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力」「チームで仕事をするとき、自分がどのような役割を果たすべきかを理解する力」と定義されています。メンバーが相互に関係性を理解し、またそれぞれが自分の役割をしっかりと果たしたチームは、研修終了後も別れを惜しむようにお互いの貢献に感謝し合っています。このようなシーンは、講師冥利に尽きる瞬間でもあります。このような方々の顔は、テキストや講師の話以外からも、数多くのことを学び気づいたという満足感に満ちています。
この「チームマネジメント」という本には「情況把握力」に関連した情報として、「チーム内コミュニケーションのとり方」「モチベーションの引き出し方」「コンピテンシーラーニング」「ベテランメンバーの活用」などが体系的に紹介されています。たいへんわかりやすく書かれているため、一般的な理論としてサラッと読み過ごしてしまいがちになる点には注意が必要です。ここで紹介されている内容を実際のチームマネジメントに活かし、実践的スキルとして確実に習得していかなければなりません。
この本を読んだうえで、今一度、自分が所属しているチームを見直してみてください。きっと、今まで気づかなかった「情況」が見えてくることでしょう。(文責:古木)