さて今回からは、いよいよ3つ目の能力「チームで働く力」に入っていきます。
この能力は他の2つの能力「前に踏み出す力」「考え抜く力」がそれぞれ3つの能力要素から構成されているのと違い、最も多い6つの能力要素から構成されています。そのうち、まずは「発信力」を取り上げていきたいと思います。
「発信力」(12の能力要素から)
【内容】(「中間とりまとめ」より)
自分の意見をわかりやすく伝える力
【例】(「中間とりまとめ」より)
自分の意見をわかりやすく整理した上で、相手に理解してもらうように的確に伝える。
【着眼点】(「社基塾」オリジナル)
①情報共有の心がけ
情報を個人が独占するのではなく、チームで共有することの必要性を理解し、積極的に発信している。
②わかりやすい伝え方
結論が先、箇条書き、具体性(数字・固有名詞)、短文、事実/意見の区分など、聞き手にとってわかりやすい伝え方を心がけている。
③発信手段の選択
対面、メール、文書、電話、ファックスなど、各手段のメリット・デメリット(特にデメリット)をふまえ、的確な発信手段を選択している。
【基準】(「社基塾」オリジナル) ※各能力要素/各着眼点共通
<5ポイント>
その行動・傾向を自他とも認めており、他メンバーの模範となっている。必要な場合には、他メンバーに対して指導・教育している。
<4ポイント>
常にこのような行動・傾向がみられる。特に意識しなくても、自然に行動する姿勢が身についている。
<3ポイント>
このような行動・傾向を心がけているが、レベルは平均的。自らそれを高めようという意欲・姿勢は見られない。
<2ポイント>
独力では困難であり、他メンバーによるサポートがないと、このような行動・傾向は見られない。
<1ポイント>
他メンバーによるサポートをもってしても、このような行動・傾向はほとんど見られない。今後の改善見通しは、まだ立たない。
さあ、あなた自身の各着眼点のポイントは、何点でしたか。
あなたが育成すべき対象者に対しては、何点と評価しましたか。
「発信力」に対する3つの着眼点の合計ポイントは何点でしたか。
【活用ストーリー】
育成リーダーである社基 力(やしろもと つとむ)リーダーは、育成対象者Gさんとの面談にのぞんでいました。
Gさんの自己評価をきいてみると、次の通りでした。
①情報共有の心がけ : 4ポイント
②わかりやすい伝え方 : 3ポイント
③発信手段の選択 : 4ポイント
一方、育成リーダーである社基 力(やしろもと つとむ)リーダーは、次のように評価していました。
①情報共有の心がけ : 4ポイント
②わかりやすい伝え方 : 4ポイント
③発信手段の選択 : 4ポイント
社基リーダー
「わかりやすい伝え方に課題があると感じているようだね。」
Gさん
「実は先日の会議で発言したときに、ある参加者から『何を言いたいんだ』と鋭く指摘されてしまい、自信がなくなっちゃったんです。」
社基リーダー
「私にも経験があるよ。若いころ、取引先やお客様から『言っていることがわからない』と指摘されてね。」
Gさん
「へ~え、リーダーにもそんな頃があったんですか。今のリーダーの話はたいへんわかりやすく、私もあんなふうに話せたらなあなんてよく思っていますよ。わかりやすく話せるようになるコツのようにものは何かありますか。」
社基リーダー
「私が発信力を強化した方法が参考になるかも知れないね。発信って『話す』『書く』ことによって自分の意見を他人へ伝えるという点では、アウトプットだよね。じゃあ、インプットって何だと思う?」
Gさん
「『話す』『書く』というアウトプットに対するインプットは・・・『聴く』『読む』ですか?」
社基リーダー
「そうだね、このアウトプットとインプットは、たいへん強くつながっているんだよ。わかりやすくアウトプットするためには、わかりやすいインプットを増やすことが最も効果的なんだよ。Gさん、あなたのまわりで最もわかりやすいインプット『聴く』『読む』って、な~んだ?ヒントは、いつも届けられるもの。」
Gさん
「もしかしたら、新聞ですか?」
社基リーダー
「その通り!新聞記事は最もわかりやすいインプットの見本のようなものなんだよ。まず結論が見出しに示されていて、記事の構成は箇条書きが主流で、数字や固有名詞が具体的だし、記事は短文で、必要に応じて図や表も使っているでしょ。」
Gさん
「そうか、こんな身近によい見本があったなんて気づかなかったなあ。」
社基リーダー
「私が発信力を高めた方法は、この新聞をわかりやすい発信の見本として日々読む習慣を身につけたことなんだ。ついでに言っておくと、ウェブじゃなくて紙面をお勧めするよ。新しい情報を入手することが目的だったらウェブでもいいんだけど、発信力の参考にするのなら考えながら読み進められる紙面に軍配が上がるよ。」
Gさん
「さっそくやってみます。わかりやすい発信方法に注意しながら、明日から毎日30分読むようにします!」
社基リーダー
「それは素晴らしい習慣だね。“習慣は第二の天性なり”って言葉もあるから、これからの成果を期待しているよ。」
Gさんは、明日から新聞を読むタイミングと場所を考えながら、朝刊の配達を楽しみにするのでした。(文責:古木)