今回からは、2つめの能力である「考え抜く力」について見ていきたいと思います。
「課題発見力」(12の能力要素から)
【内容】
現状を分析し目的や課題を明らかにする力
【例】
目標に向かって、自ら「ここに問題があり、解決が必要だ」と提案する。
【着眼点】
①洗い出し
多面的な視点(人:担当者・管理職、業務:分担・効率化、組織:職場環境・制度 など)から、職場に潜んでいる課題をもれなく洗い出している。
②現状分析
課題を単に「問題あり」と指摘するのではなく、客観的テータや具体的事実にもとづいて課題の悪さ加減を明確にし、対策の必要性を訴えている。
③原因究明
「なぜ?」を繰り返したり「特性要因図」を用いたりしながら、課題を引き起こしている「真の原因」を究明し、「原因を除去する対策」へとつなげている。
【基準】(各能力要素/各着眼点共通)
<5ポイント>
その行動・傾向を自他とも認めており、他メンバーの模範となっている。必要な場合には、他メンバーに対して指導・教育している。
<4ポイント>
常にこのような行動・傾向がみられる。特に意識しなくても、自然に行動する姿勢が身についている。
<3ポイント>
このような行動・傾向を心がけているが、レベルは平均的。自らそれを高めようという意欲・姿勢は見られない。
<2ポイント>
他メンバーによるサポートがないと、このような行動・意識は特には見られない。
<1ポイント>
他メンバーによるサポートをもってしても、このような行動・傾向はほとんど見られない。今後の改善見通しは、まだ立たない。
さあ、あなた自身の各着眼点のポイントは、何ポイントでしたか。
あなたが育成すべき対象者に対しては、何ポイントと評価しましたか。
「課題発見力」に対する3つの着眼点の合計ポイントは何ポイントでしたか。
今回も基準が厳しいと感じる方もおられると思います。
しかし、「社会人基礎力」は「専門知識」や「実務経験」の基礎となるたいへん重要な能力です。また「評価基準」というものは、それを目標として高めるための育成へとつなげていくものです。甘くするわけにはいきません。高得点を目指した育成へとつなげていただきたいと思います。
各着眼点における評価ポイントを高める実践的トレーニングは、
セミナー版「社基塾」にて実施していきます。どうぞご期待ください。
(育成・強化の方程式:インプット→アウトプット→自らの気づき→他メンバーからの気づき→行動宣言→習慣化)
【活用ストーリー】
育成リーダーである社基 力(やしろもと つとむ)リーダーは、育成対象者Dさんとの面談にのぞんでいました。
Dさんの自己評価をきいてみると、次の通りでした。
①洗い出し : 4ポイント
②現状分析 : 3ポイント
③原因究明 : 3ポイント
一方、育成リーダーである社基 力(やしろもと つとむ)リーダーは、次のように評価していました。
①洗い出し : 4ポイント
②現状分析 : 3ポイント
③原因究明 : 2ポイント
社基リーダー
「Dさんは与えられた仕事はしっかりとやり遂げて、たいへん助かっているよ。これからは、中堅社員として職場の課題解決にも取組んで欲しいなあ。」
Dさん
「そうですね、最近は仕事も増えてきましたが社員は増えるわけではありません。残業時間も減らせって言われてますし、改善が必要ですよね。ね。でも、今までは前例を踏襲するだけで、あまり改善をしてきませんでした。だから、正直言ってどのように進めればよいのか戸惑っているってのが本音なんです。」
社基リーダー
「それだったら、着眼点の中にヒントがあるんじゃないかなあ。評価っていうのは、過去の実績評価だけではなく、今後進むべき方向性を示しているんだったよね。」
Dさん
「私の場合、課題の洗い出しや現状分析はまあまあできていると思うんです。ただ、すぐに「だからどうする」って対策を考えてしまって、原因を究明することはあまりやったことがないんですよ。」
社基リーダー
「原因究明することは遠回りのように感じるかも知れないけど、有効な対策を検討するうえでは欠かせないステップで、かえって近道なんだってことに気づいて欲しいな。現状を分析し真の原因を究明して、初めて課題の本質を発見したって言えるんじゃないかなあ。」
Dさん
「じゃあどうすればいいんでしょうか、教えてください。」
社基リーダー
「ほら、さっき言ったように着眼点の中にヒントが隠されているんだよ。まずは、QCの7つ道具にも数えられていた特性要因図を作るスキルを身につけることだと思うよ。検索エンジンで特性要因図と入力して、画像検索してごらん。魚の骨のように形をした特性要因図のサンプルがたくさん表示されるから。特性要因図を作成するスキルを高めたかったら、まずは数多くの特性要因図を見ることが一番の近道だと思うよ。」
Dさん
「画像検索ですか、今まであまり使ってこなかったですね、アイドルの写真を見る時くらいしか・・・。さっそくやってみます!」
Dさんは、職場の課題解決に向けた第一歩を踏み出すことができた喜びを実感していました。(文責:古木)