今年も新社会人を迎える季節になりました。
私もいくつかの組織にて、フレッシュな若者たちと切磋琢磨する機会に恵まれました。今年の新人は、四年制大学卒の場合には1年生の時に「リーマン・ショック」を経験しています。その影響もあり、早い時期から真剣に就職に取り組んでいます。結果として、能力的にはたいへん優秀であり、強い意気込みも感じられました。新人を迎える先輩たちは、きっと「自分たちが新人だった頃、こんなにしっかりしていたっけ?」と驚かれることでしょう。
熱心な新人は、研修の合間の休憩時間を利用して講師に質問に来ます。
質問者で行列ができることもあるほどです。研修内容についての質問が多いのですが、中には「今後のキャリア形成」について意見を求められる場合もあります。外面はしっかりした若者ですが、実は繊細で不安を抱えている内面を垣間見る瞬間でもあります。
最近の職場の変化として、雇用形態の多様化やIT化があげられます。
以前は正社員が主体でしたが、今では、契約社員・派遣社員・アルバイトなど、雇用形態も多様化してきています。また、ひとりに1台のパソコンも行きわたり、簡単な書類作成・計算処理は機械が代行してくれます。しかし、ここに新人にとっての試練が潜んでいます。以前であれば、入社したての頃は簡単な作業をしながら徐々に仕事を覚えていけばよかったのです。ところが今では、そのような作業は正社員以外の方やパソコンが処理してくれます。新人には「徐々に覚える」という余裕は与えられず、すぐに正社員として一人前な仕事を任されるケースが増えてきています。スポーツに例えれば、まだ足腰が鍛えられていない新人選手が、いきなり試合本番に出されるようなものです。確かに、機会を与えられたことを喜び、力を発揮する新人もいるでしょう。しかし、多くの新人は仕事がうまくいかずに、自信を失ってしまうこともあります。
このような時こそ、社会人基礎力を思い出してください。
社会人基礎力を強化するということは、スポーツの「走り込み」のようなものです。野球でもサッカーでも、すべての基本です。今は、しっかりし走り込み足腰を鍛え、これからの専門的な仕事に備えることが大切なのではないでしょうか。社会人基礎力は、3つの能力、12の能力要素から構成されています。社会人としての基本のすべては、この組み合わせで成り立っています。その中でも特に新人に必要とされる力は、「主体性」「実行力」「発信力」「情況把握力」「ストレスコントロール力」です。これらは、企業が採用時に重視している能力要素とも重なります。どこから手をつけてよいか迷ったり、あれもこれもと手を出したりするより、この5つの能力要素を徹底的に強化することの方が効果があります。「基礎力」がしっかりしていれば、「専門力」はいずれその上に 形成されていくものなのです。あのイチローも、基礎的な「走り込み」を大切にしています。新入社員のみなさん、これからのご活躍を期待しています。(文責:古木)