■ごあいさつ
ついに昨日、緊急事態宣言が全面的に解除されました。社会では、ホッと一息つく半面、第二波も懸念されています。一方介護現場では、まだまだとてもそんな状況ではないと案じております。
安倍総理が記者会見にて「次なるステージへ、国民とともに力強い一歩を踏み出す」と述べておられました。まさに「社会人基礎力/ノンテクニカルスキル」の「前に踏み出す力」が求められる場面ではないでしょうか。
今回は、その「前に踏み出す力」のうち、3つ目で最後の「働きかけ力」についてみていきたいと思います。
1.チームリーダーの「働きかけ力」
2.今回注目された都道府県知事「働きかけ力」
3.働きかけ技法
4.これからのご提案
5.おわりに
■チームリーダーの「働きかけ力」
今までは、定着化を進めるため、主な離職理由のひとつである「法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に不満があったため」に着目し、施設・事業所の経営理念を再確認し、何に取り組むか(主体性)、目指す目標(ゴール)の設定(実行力)についてみてきました。
今回は、その経営理念の実現に向けて、設定した目標を達成するために、まわりを巻き込んでいく「働きかけ力」についてみていきます。
ひとりでできることには、限界があります。経営理念の実現にも、まわりを巻き込んでいく必要があります。しかし、リーダー研修に登壇してみて感じることは、多くのリーダーがまわりを巻き込むことを苦手にしていることです。結果として、自分ひとりで仕事を抱え込み、疲弊してしまうケースが生まれています。あなたの職場では、このようなことは起きていませんか?
チームリーダーにとって、まわりを巻き込むことは大切な役割です。チームメンバー、上司、他職種、利用者、利用者家族など、いろいろな方に働きかけ、巻き込んでいく場面が数多く出てくると思います。そこで、今回の緊急事態宣言への対応にて注目された都道府県知事の働きかけ方から、いろいろ学んでいきたいと思います。
■今回注目された都道府県知事「働きかけ力」
緊急事態宣言が発令されたことにより、その後の対応が都道府県知事に委ねられました。海外でも、ニューヨーク州のクオモ知事が支持率80%を超えるほどでした。
国内を見てみますと、よい「働きかけ力」を発揮したといわれるのは、「大阪モデル」を発表した吉村大阪府知事、「東京アラート」を発表した小池東京都知事、地域ごとの方言で帰省自粛を呼びかけた丸山島根県知事あたりのようです。
一方、働きかけがうまくいかなかったのが伊原木岡山県知事のようでした。「今は来ないで」と訴え、県庁には抗議の電話やメールが相次いだそうです。ちなみに、同知事は普段は強い言葉を使わない方だそうです。命に関わる話なので、あえてきつい言い方をされたそうです、念のため。
いずれにしましても、「働きかけ力」で大きく印象や結果が変わるということですね。
■働きかけ技法
では、チームリーダーとして、関係する方々へどのように働きかけていけばよいのでしょうか。代表的な技法としては、3つあります。
第一は、相手の規範意識に訴えます。これは吉村大阪府知事や小池東京都知事のように守べき規範を示して、「○○すべきです」「○○してはいけません」というように働きかける技法です。
第二は、相手の利害感覚に訴えます。だれも得をしたいし、損をしたくありません。今回、宮崎県の崎田日南市長が「帰省を断念し、航空機をキャンセルした先着50名に、特産のマンゴーをプレゼント」と発表しましたが、まさに利害感覚に訴えた例ではないでしょうか。「○○した方が得ですよ」「○○すると損しますよ」というように働きかける技法です。
第三は、相手の感情に訴えます。第一と第二が人間の左脳に訴える反面、これは右脳に訴える技法です。先ほどの丸山島根県知事は「早く会いたいけん、今は帰らんでいいけんね。」と訴えました。まさに故郷の親を想い、帰省を検討している若者には刺さったのではないでしょうか。
■これからのご提案
これら働きかけ技法は、言われてみればごく当たり前のことです。しかし、これを意識することによって、事前に準備できたり、働きかけるテーマや相手によって使い分けができたりするようになります。きっとまわりの方々への働きかけがスムーズにいくようになることでしょう。日頃の働きかけを通して、ぜひ練習してみてください。
■おわりに
今回を持ちまして、定着化を目指した「前に踏み出す力」のご紹介は終了です。
次回からは、生産性の向上を目指した「考え抜く力」をご紹介していきたいと思います。新型コロナウイルスの影響により影が薄くなってしまいましたが、「働き方改革」のためには、必須のスキルです。残業を減らしたい、有給休暇を取りたい、ミスを減らしたい、などというチームリーダーの方のお役に立てればと思います。
日本において感染の拡大が抑えられていることが、欧米から注目されているそうです。
日本人の律義さや清潔感などが貢献したのではないでしょうか。今後もこの日本人の特性が発揮され、第二波を無事に乗り切ることを期待たいと思います。
追伸:東京都が発表した「コロナ対策 東京かるた」なるものが注目されているそうです。危機意識を高めるとともに、新型コロナウイルスに対する理解を深め、ステイホームを楽しく過ごす方法としては、なかなか面白い取り組みだと思います。ぜひご参照ください。