■ごあいさつ
いまだに新型コロナウイルス終息の兆しが見えず、残念ながら緊急事態宣言は大型連休明けも継続される見通しです。
このような中、介護崩壊防止のために尽力いただいている方、感染防止のためやむなく休業されている方など、心身に相当な負担がかかり、ストレスを感じておられと思います。
そこで、今回は「社会人基礎力/ノンテクニカルスキル」の1つである「ストレスコントロール力」として、「ストレス対処能力S.O.C.」についてご紹介したいと思います。少しでもあなたのストレス軽減にお役に立てれば幸いです。
■本日の主な内容
1.「夜と霧」
2.ストレス対処能力SOC
3.コロナウイルスへのSOC
■「夜と霧」
「夜と霧」は、精神科医であったヴィクトール・E・フランクルが第二次世界大戦中にユダヤ人強制収容所にて経験したことを書いたものです。日本だけでも100万部を優に超える、世界的な大ベストセラーとなりました。
この中でフランクルは「人生はどんな状況でも意味がある」と説き、生きがいを見つけられずに悩む人たちにメッセージを発し続けました。
収容所という絶望的な環境の中で希望を失わなかった人たちの姿から、人間の「生きる意味」とは何かを探ります。そして苦境に陥った時の「希望」の持ち方について考えていきます。
先の見えない不安が広がっている今だからこそ、わたしたちはこの本から多くのことを学ぶことができるのではないでしょうか。
■ストレス対処能力S.O.C.
そんな「夜と霧」の影響を受け、ユダヤ人の医療社会学者であるアントノフスキー博士がストレス対処能力として発表したものがS.O.C.(Sense of Coherence:首尾一貫感覚)です。
これは、ユダヤ人強制収容所にて多くの人が命を落とす中、生き延びた人もいました。博士が生き延びた人に共通する特徴に着目して調べた結果、生き延びた人たちはある共通して3つの感覚を持っていたことがわかったのです。強度なストレスの中、生き延びた人たちが共通して持っていた感覚が「ストレス対処能力S.O.C.」だったのです。
具体的には、以下の3つの感覚です。
1.把握可能感(わかる感)
目の前の状況、全体の状況、これからの状況など、自分が置かれている状況がわかる感覚。
2.処理可能感(できる感)
なんとかなる、なんとかやっていける、自分は一人じゃないなど、自分は大丈夫という感覚。
3.有意味感(やるぞ感)
仕事や日々の生活、すべての物事に意味ややりがいを感じ、「生きる意味」を「生きる力」に変えて人生の逆境を乗り越えていく感覚。
これらは当たり前のようですが、このように整理されると現在の自己診断や今後の強化へとつなげやすいと思いませんか。またこれらが弱いと、ストレスに負けて体調を崩したり、その状況から逃げ出したくなったりしやすくなりそうです。
■新型コロナウイルスへのSOC
では、「ストレス対処能力S.O.C.」を今回の新型コロナウイルスにあてはめるてみるとどうなるでしょうか。
1.把握可能感(わかる感)
「先行した中国では、すでに通常の生活が再開されつつある。あれだけひどかったイタリア・スペイン・アメリカも、感染者はヤマを越え通常の生活へ向かいつつある。日本も感染者の増加が減少しつつあり、近いうちに通常の生活に戻れる兆しが見られるだろう。」
2.処理可能感(できる感)
「今回の新型コロナウイルスへの対応はたいへんだけど、やるべきことはわかってきた。自分が果たすべき役割もわかってきた。たいへんだけど、その役割はなんとか果たせそう。感染者数の増加も緩やかになってきたようだから、なんとな乗り切れそう。」
3.有意味感(やるぞ感)
「確かにたいへんだけど、戦争の方がたいへん。第二次世界大戦の日本やユダヤ人矯正収容所のことを思えば、まだまし。これを機会に私も介護という仕事の意義を再確認したし、利用者や家族も介護の必要性を痛感されたと思う。またリスク管理の大切さもわかった。これからは、事業継続化計画(BCP)も真剣に見直したい。今はたいへんだけど、介護体制の強化のためには有効だったのかも知れない。」
以上は、あくまで参考例です。ぜひあなたの言葉で考えてみてください。そして、これを機会にストレス対処能力を高めてください。「ストレス対処能力S.O.C.」は、新型コロナウイルスだけではなく、すべてのストレスに対しても有効な手法です。
■おわりに
今回は号外として「ストレスコントロール力」のひとつ「ストレス対処能力S.O.C.」をご紹介しました。あなたのストレスを少しでも減らすことができれば幸いです。
次回の「働きかけ力」については、5月中旬に配信させていただく予定です。
その頃は、新型コロナウイルス終息の兆しが出ていることを期待したいと思います。