前回までは、12回にわたり各能力要素の評価基準についてみてきました。今回からは、12の能力要素について、それを強化するためのワークについて見ていきたいと思います。
見たり聴いたりしただけでは、まだ「わかる」レベルです。目指すのは「できる」レベルです。このレベルに達して、初めて使いこなすことができます。そのためには、ワークを通して、実際に考える、他の人の意見を参考にする、講師からフィードバックを受ける、行動に移す、習慣化するというステップが欠かせません。
今回は、初回ですので3つの能力から「前に踏み出す力」の中の「主体性」の「強化ワーク」について見ていきます。
では、改めて経済産業省がとりまとめた「中間取りまとめ」から、「主体性」の内容と例について、確認しておきます。
【内容】物事に進んで取組む力
【例】指示を待つのではなく、自らやることを見つけて積極的に取組む。
前回まで見てきた「着眼点」としては「自発性」「将来構想」「自己理解」をご紹介しました。今回は、そううちの「自己理解」の一環として「強み」についての「強化ワーク」をみなさんと一緒に取り組んでいきたいと思います。
このワークは、4つのステップから構成されています。
ぜひ、みなさんもチャレンジしてみてください。
【ワーク①】あなたの「強み」は何ですか?3つあげてください。
【ワーク②】現在の仕事を通して、どのように発揮していますか、または発揮していきますか。
【ワーク③】その「強み」を自分の武器として、どのように強化していますか、または強化していきますか。
【ワーク④】その「強み」をまわり(上司・先輩・同僚・部下・後輩など)と共有できていますか。
さあ、いかがでしたか。なかなか書き出すことに苦労されたのではないでしょうか。セミナーでは、みなさんがお書きになった内容を発表・共有しながら、理解を深めていきます。
【ワーク解説】
「自らやることを見つけて積極的に取組む」という「主体性」を身につけるためには、「自己理解」が欠かせません。しかし「さあ自分を理解しろ」といわれても、理解できるものでもありませんよね。そこで、自分の「強み」をあげることを通して、自己理解を深めていただきます。
≪ワーク①≫
自分自身の「強み」でありながら、だいたいこんなところかとあいまいに意識することはあっても、明確に「把握」されているという方は少ないのではないでしょうか。しかし、これからみていきます「発揮」「強化」「共有」を実現するためには、明確に「把握」することが必要となります。そこで、ふたつの参考情報をご紹介しましょう。
ひとつ目は、書籍「さあ才能に目覚めよう」(日本経済新聞社)です。この中には「34の強み」が紹介されています。白紙の状態から考えるより、いくつかの例示の中から選ぶ方が取組みやすいですよね。
ふたつ目は、日本ポジティブ心理学協会のサイトにも紹介されているペンシルバニア大学が開発した強み診断ツール「VIA-IS」(無料)です。 ここでは「24の強み」が紹介されています。
サンプルとして「育成のための評価基準」に登場した社基 力(やしろもと つとむ)リーダーは、どのような「強み」を「把握」したのか、みてみましょう。
(1)「自己確信」
自分は大丈夫だ!という根拠のない確信がある。
(2)「ポジティブ」
否定的な人がいると、前向きな見方にもっていきたくなる。
(3)「学習欲」
新しい事を学ぶこと、学ぶプロセスが大好き。
「把握」するポイントは「ゼロから考えない」「常に見直す」です。
≪ワーク②≫
どんな「強み」でも、どんな「仕事」でも、それを「発揮」できる場面が必ずあります。ご自分の業務の流れを整理していただきき、どんな場面で発揮できるかを考えてみましょう。
≪ワーク③≫
今後、年金受給開始年齢は65歳に順次延長されていきます。年金財政の問題も考慮しますと、この需給開始年齢はより伸びる可能性もあります。このような厳しい環境の中、自分の生活や仕事は自分で守っていくる必要があります。把握した「強み」を自分の「武器」といえるレベルまで強化していくことが求められます。
例えば社基リーダーは、次のような方法で「強み」を強化していく計画を考えました。
(1)「自己確信」
「根拠のない自信」から「確たる自信」へと強化するために、新聞を活用し、日経新聞を毎日30分以上読み視野を拡げる。
(2)「ポジティブ」
「ポジティブ」な考え方をしている人の声を直接きく機会として、TV(教養番組)を活用して、「プロフェッショナル~仕事の流儀~」(NHK総合)「人生デザインU29」(Eテレ)「カンブリア宮殿」(テレビ東京系列)をみる。時間が合わないときには、録画して週末にみる。
(3)「学習欲」
毎月新たな本を1冊読むとともに、今まで読んだ本の中でよかった本として「7つの習慣」(スティーブン・コヴィ著)「」(デール・カーネギー著)などを今一度読み返し、実践へとつなげていく。
≪ワーク④≫
以前のセミナーにて、受講者同士お互いの「強み」と「弱み」を発表・共有していただいた時に不思議な現象が起きました。セミナーで初めて会ったはずなのに、旧知の仲のように相手のことがよくわかるように感じられたのです。この「共有」は、職場コミュニケーションの促進、報告・連絡・相談しやすい環境づくり、相互理解、信頼関係の構築、仕事の分担(適材適所)、相手に応じた指示の出し方、ほめるところの発見など、いろいろな場面で効果を発揮します。(文責:古木)